6月5日の日本語クイズ(1)の答え

1)太字部分は誤用です。正しい言い方に直してください。

1. ただいま先生がおっしゃられたように…
答え:おっしゃった/言われた

2. では、一曲歌わさせていただきます。
答え:歌わせて

3. たいへんお待たせをいたしました
答え:お待たせいたしました

4. 先生はもうお帰りになられました
答え:お帰りになりました/帰られました

5. 先生、X先生にお会いされたそうですね。お元気でございましたか
答え:お会いになった/会われた、いらっしゃいましたか
「〜でございます」は「〜です」と同じ丁寧語。「〜です」より丁重ではあるが、尊敬語ではない。

6.「ここで事件があったことをご存じですか」「いいえ、存じ上げません
答え:存じません
「存じ上げません」を使うのは、目上の人に関することを「知らない」とき。

7. 彼がやっとプロポーズしてくれたんです。もちろん一つ返事でOKしました。
答え:二つ返事
「ハイハイ」と答えると、「ハイは一度!」と叱られるのは確かだが。

8. それは違くて、これが正しい。
答え:違っていて/間違いで
「〜くて」は「大きい」「小さい」などの形容詞の活用形。「違う」は動詞、「違い」は名詞。

 

2)正しい表記は a と b のどちらですか。金武伸弥『王道日本語ドリル』(集英社新書、2008年)より

1. a. こんにち。 b. こんにち
答え:a

2. a. 来る来る、人が大勢来ます。 b. 来る来る、人が大勢来ます。
答え:b
「わ」は終助詞。文例①車はパンクする、遅刻して上司に叱られるで、散々な一日だった。②わたし、まだパリに行ったことがないの。一度行ってみたい。③そら、あかんわ。

3. a. 要旨は次のとうりです。 b. 要旨は次のとおりです。
答え:b 漢字:通り

4. a. お待ちどうさま。 b. お待ちどおさま。
答え:b 漢字:お待ち遠様

5. a. こぢんまりとした店。 b. こじんまりとした店
答え:a(bも許容されている)

6. a. 力ずくで抑えられた。 b. で抑えられた。
答え:a(bも許容されている)

7. a. 子供が「おうさまは裸だ」と言った。 b. 子供が「おおさまは裸だ」と言った。
答え:a 漢字:王様

8. a. おうぎを持って舞います。 b. おおぎを持って舞います。
答え:a 漢字:扇

9. a. おうせに従います。 b. おおせに従います。
答え:b 漢字:仰せ

10. a. おうむ返しに言う。  b. おおむ返しに言う。
答え:a 漢字:鸚鵡

 

3)太字部分は、アナウンサー、講演者等の言い間違い、勘違い、原稿の読み間違いの実例です。意味を考え、正しい漢字表記にしてください。

1. 大型連休初日の今日、大勢の人が成田からシュツゴクしました。
答え:出国(しゅっこく)
シュツゴクだと、「出獄」になってしまう。同様の例「入国・入獄」

2. このに及んで、まだそんなことを言っているのですか。
答え:期(ご)
「最期」は命が絶えるとき。死に際。「最後」は物事の一番あと。

3. 三大シツビョウ、すなわち、癌、急性心筋梗塞、脳卒中は、毎日の生活習慣で予防できると言われています。
答え:疾病(しっぺい)
「病」は、漢音(7、8世紀に伝来)で「へい」と読む。例:詩八病(しはちへい)=漢詩を作るときに避けるべき八つのこと、人材(じんざい)、男女(だんじょ)、平日(へいじつ)、変化(変化)
「びょう」と読むのは、漢音より前に伝わった呉音。例:人間(にんげん)、男女(なんにょ)、日曜(にちよう)、変化(へんげ)

4. この町には江戸時代のナノコリをとどめる地区があり、絶好の散策場所になっている。
答え:名残(なごり)
慣用として、「り」を送る「名残り」も認められている。

5. 高校生にもなって、もののヨシワルシの区別がつかないなんて、実に嘆かわしい。
答え:善し悪し(よしあし)

6. このたび、ジジカイの会長を仰せつかりました。
答え:自治会(じちかい)
爺会(じじかい)?!
「治」を「ち」と読む例:地方自治体、治安、治療、治水、法治国家、全治、(不治)
「治」を「じ」と読む例:政治、湯治、主治医、荒療治、不治、(全治)

「全治」は「ぜんち」と読むのが一般的だが、「ぜんじ」も可能。「不治」は「ふじ」と読むのが一般的だが、「ふち」も可能。

7. 人生は順風マンポに見えたのだが…。
答え:満帆(まんぱん)
帆船(はんせん)、順風に帆(ほ)を上げる、帆柱(ほばしら)

8. お茶にしましょうか。ちょっとキュウユ室に行ってきます。
答え:給湯(きゅうとう)
給油(きゅうゆ)は、燃料油を補給すること。

9. 多くの方々にごジンリキいただきまして…。
答え:尽力(じんりょく)
「尽力を尽くす」は重複表現。「力を尽くす/尽力する」が適切。「人力」は「じんりき」と読むが、「じんりょく」も可能。

10. このコンジュンとした世の中で…。
答え:混沌(こんとん)
「沌」は確かに「純」に似ているが…。

11. 規則はソンシュすべきです。
答え:遵守(じゅんしゅ)
「循守」とも書く。「順守」は代用字。

 

4)【  】の表現を正しく用いているのは aですか、bですか。

1.【足を洗う】
a. 政治の世界から足を洗ったら、ぜひ農業をやりたいと思っているんです。
b. 人を騙して儲けるような仕事から足を洗って、一からやり直したい。
答え:b
今までのよくない仕事を辞める。

2.【敷居が高い】
a. あの家はちょっと敷居が高くて…。若いころ、あそこのご主人に物心両面から援助してもらったんだけど、亡くなったとき、なんとなく面倒くさくてお葬式に行かなかったもので。
b. 一等地に店を構える高級ブランド店に一度入ってみたいと思うけれど、庶民の私には敷居が高い。
答え:a
不義理なこと、不面目なことをしたせいで、その家に行きにくい。ハードルが高い、自分の能力を超えていて手が出ない、という意味ではない。

3.【すべからく】
a. もろもろの目標をすべからく達成することができ、満足している。
b. いったん目標を定めたら、それを達成するために、すべからく努力すべし。
答え:b
漢字は「須く」。「〜べし/べきだ」を伴い、次のことをすべきだ、という意味の古語的表現。「すべて」の意味はない。

4.【破天荒】
a. 一見温厚そうな紳士だが、取り巻きを引き連れて飲みに行き一晩で百万円以上使うとか、一度ならず暴力事件を起こして警察沙汰になるなど、破天荒な人だった。
b. パリ・東京間を2時間半で結ぶ旅客機を2050年に就航させるというエアバス・グループの計画は、まさに破天荒の試みと言えよう。
答え:b
前代未聞、未曾有の意。豪快、大胆、常軌を逸している、破廉恥、などの意味はない。人の性格などを表す言葉としては使わない。

5.【やおら】
a. 彼は堪忍袋の緒が切れたとばかりにやおら立ち上がり、一気にまくし立てた。
b. 彼は落ち着いた様子でやおら立ち上がり、一礼してから静かに話し始めた。
答え:b
ゆっくりと動作を起こす様子。

6.【煮詰まる】
a. 長い間検討してきた計画がやっと煮詰まった。これで一安心だ。
b. よいメロディーが浮かばず、曲作りに煮詰まる。そんなときの気分転換は料理だ。
答え:a
議論などが十分になされ、結論の出る段階になる。行き詰まる、にっちもさっちもいかない、の意味はない。「煮詰まる」は自動詞で、「煮詰める」は他動詞。「この企画書はまだ検討が必要だね。もう少し煮詰めてから持ってきなさい」のように用いる。

7.【耳ざわり】
a. あの人の声は甲高くて耳ざわりだ。
b. あの人の声は優しく柔らかで、本当に耳ざわりがいい。
答え:a
漢字は「耳障り」。聞いていて不快に感じること。同様の例に「目障り」がある。「肌触りがいい」とは言うが、「耳触り」という言葉は存在しないので、「耳触りがいい」もない。「聞いていて気持ちがいい」「耳に心地よい」と言うことはできようか。

8.【耳が痛い】
a. 記者らが、数年前に起きた事務所の不祥事についても尋ねたが、大臣はそうした耳の痛い質問にも丁寧に答えていた。
b. 「テレビで一人暮らしの女性の“ゴミ屋敷”を見たんだけど、足の踏み場もない部屋の中にスナック菓子の袋がいっぱい。まず掃除して、それからダイエットもしなくちゃダメだね」「掃除とダイエット。うわっ、耳が痛い」
答え:b
直接指摘されているわけではないが、人の言っていることがまさに自分の欠点、弱点を突いているので、聞くのがつらい。aは直接指摘している。

 

5)次の文を漢字仮名交じり文にして、句読点(「。」と「、」)をつけてください。石黒圭・筒井千絵『留学生のための文章表現のルール』(スリーエーネットワーク、2009年)より

はつかごぜんじゅうじごろとうきょうとしんじゅくくしんじゅくさんちょうめいんしょくてんけいえいおおやまゆみさん(ごじっさい)かたからしゅっかもくぞうにかいだてじゅうたくやくひゃくにじゅうへいほうめーとるがぜんしょうしたおおやさんとかぞくはにげだしてぶじしんじゅくしょがげんざいしゅっかげんいんをしらべている

答え:二十日午前十時ごろ、東京都新宿区新宿三丁目、飲食店経営大矢真由美さん(五十歳)方から出火、木造二階建て住宅約百二十平方メートルが全焼した。大矢さんと家族は逃げ出して無事。新宿署が現在、出火原因を調べている。

読点の付け方には個人差がある。意味が正しく伝わればOK。「毎日、新聞を読む」「毎日新聞を読む」など。固有名詞「おおやまゆみ」の正しい表記は不明。あとのほうを読むと、姓が「おおや」であることがわかるので、「大山ユミ」とはならない。また、「おうや」と書かれていないので、「王屋まゆみ」もありえない。解答例以外に、大屋真弓、大谷麻由美、大宅マユミその他の表記が考えられる。

 

6)味見したいときの言い方として、正しいのはどれですか。
a. 私にも少し味あわせてください。
b. 私にも少し味わせてください。
c. 私にも少し味わわせてください。
d. 私にも少し味あわさせてください。
答え:c
「味わう」は「買う」「会う」「酔う」「賑わう」などと同じ五段活用動詞。五段活用動詞を「〜せてください」にするには、まず「〜ない」の形を作り、そこから「ない」を省いて「せてください」をつければよい。「味わわせてください」「買わせてください」「会わせてください」「酔わせてください」など。

味わわない・味わいます・味わう・味わうとき・味わえば・味わえ・味わおう
買わない・書います・買う・買うとき・買えば・買え・買おう
会わない・会います・会う・会うとき・会えば・会え・会おう
酔わない・酔います・酔う・酔うとき・酔えば・酔え・酔おう
賑わわない・賑わいます・賑わう・賑わうとき・賑わえば

 

7)「こちゃこちゃんないまっ」
ある場所で、ある人が私に言った言葉です。漢字仮名交じり文にしてください。
答え:こちら(は)、紅茶になります。
喫茶店のウエートレスが紅茶を運んできて、早口で言った言葉。「〜になります」ではなく、「〜でございます」「〜です」のほうが適切。

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作成者: マチルダ

マチルダこと野口恵子です。昭和27年(1952年)11月に愛知県瀬戸市で生まれ、東京で育ちました。現在は埼玉県在住。日本語とフランス語を教えています。著書に、『かなり気がかりな日本語』(集英社新書)、『バカ丁寧化する日本語』『失礼な敬語』『「ほぼほぼ」「いまいま」?! クイズおかしな日本語』(以上光文社新書)などがあります。このブログでは主として日本語の敬語について書いていますが、それ以外の話題に及ぶこともあります。どうぞよろしくお願いいたします。

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